医療ウィッグは、治療中の心の支えにもなる大切なアイテムですが、使用にはいくつかの注意点があります。頭皮の状態やお手入れ方法を正しく理解し、無理のない範囲で取り入れていきましょう。
■ 肌への負担を最優先に考えましょう
抗がん剤や放射線治療の影響で、頭皮が非常に敏感になることがあります。
具体的には、以下のような症状が起こる方も少なくありません:
• 乾燥によるかゆみやフケ
• 赤みや湿疹、皮膚のただれ
• ピリピリとしたヒリつきや痛み
• 頭皮全体の炎症反応
このような症状がある場合、無理にウィッグを着け続けるのは避けるべきです。
ウィッグが擦れることで症状が悪化したり、細菌感染などのリスクも高まる可能性があります。
★症状が出たらどうする?
• まずは使用を一時中止し、頭皮を休ませる
• 主治医や看護師に必ず相談し、皮膚科的な対処が必要かどうかを確認する
• ウィッグを使用しない期間は、医療用帽子で代用するのが安心
• 通気性が良く、肌への刺激が少ない帽子を選ぶ
★ウィッグ再開のタイミングは?
頭皮の症状が落ち着いてきたら、肌の状態を見ながら少しずつ再開するのが理想です。
その際も、「インナーキャップ(下地キャップ)」を活用することで、ウィッグと頭皮の間にクッションをつくり、直接的な刺激をやわらげることができます。
■ なぜ「インナーキャップ(下地キャップ)」が必要なの?
医療用ウィッグは、抗がん剤治療などで頭皮がデリケートになっている方でも使えるよう、肌当たりのやさしい素材や構造で作られています。
しかし、それでも直接ウィッグを頭皮に装着するのはおすすめできません。
まるで 下着なしで、洋服を着るようなものです。
理由①:汗や皮脂でウィッグがすぐに汚れてしまう
地毛のときは毎日シャンプーできますが、ウィッグは本来、毎日洗うものではありません。
頭皮から出る汗・皮脂がウィッグの内側に直接触れると、臭いや汚れが溜まりやすくなり、劣化の原因になります。
理由②:頻繁な洗浄はウィッグを傷める
ウィッグはとても繊細に作られており、洗いすぎることで毛がパサついたり、絡まり・抜け毛が起こる原因になります。
毛先が乾燥してチリついてしまうと、見た目にも不自然になり、修復が難しくなってしまいます。
また、地毛と違ってウィッグは新しく毛が生えてくることはありません。
地毛であれば、多少ダメージがあっても、伸びた分をカットして整えることができますが、ウィッグは一度傷んでしまうと元に戻すことはできません。
そのため、ウィッグを長持ちさせるためには、できる限り洗う回数を減らし、やさしく扱うことが大切です。
理由③:インナーキャップがあれば、清潔を保ちやすい
インナーキャップを使用すれば、頭皮から出る汗や皮脂をキャップが吸収してくれるため、ウィッグ本体を汚しにくくできます。
キャップ自体は、毎日洗濯機で洗ってもOKな素材がほとんど。何枚か持っておけば、常に清潔な状態でウィッグを使用できます。
■ インナーキャップの選び方と入手方法
• 肌に直接触れるものなので、縫い目やタグが少なく、通気性の良い柔らかい素材がおすすめです。
• 縫製の丁寧な医療用キャップ専用品が市販されています。
• ネット通販では、肌触りのよいオーガニックコットン製や抗菌素材のものなど、種類が豊富です。
★ワンポイントアドバイス
ウィッグ購入時に、インナーキャップがセットでついてくるお店もあります。
初めての方は、店員さんに「どんなキャップが合うか」相談してみるのも安心です。
■ 医療ウィッグの寿命は? 〜使用頻度とケアで大きく変わります〜
医療用ウィッグには明確な「使用期限」はありませんが、使い方や頻度、お手入れの状態によって寿命は大きく左右されます。
以下のような例を参考に、ご自身のライフスタイルに合わせてイメージしてみてください。
使用頻度による寿命の目安
• 毎日、通勤や外出で使用する場合:
→ 摩擦・汗・紫外線などの影響を受けやすく、早ければ半年〜1年程度で傷みが気になることもあります。
特に仕事などで長時間着用する方は、傷みが進みやすいため、1〜2年で交換する方が多い傾向です。
• 週末やお出かけ用など、使用頻度が少ない場合:
→ 保管状態が良ければ、3年以上使い続けられるケースもあります。
ただし、長期保管中もたまに状態を確認し、毛のもつれやホコリを落とすお手入れは必要です。
★長持ちさせるポイント
ウィッグの寿命を延ばすには、**「日々の丁寧なお手入れ」と「正しい取り扱い」**がカギです。
• 購入時に必ず確認しておきたいこと:
• 洗い方、乾かし方、ブラッシングの方法
• 保管方法(スタンドの有無・専用袋など)
• 使用していいスタイリング剤や避けるべき行為(例:アイロン・整髪料の種類)
• お手入れに自信がない方は、定期的にお店でメンテナンスを受けるという方法もあります。
• また、2つ目のウィッグを持ってローテーションで使うことで負担を分散し、寿命を延ばすこともできます。
■ ウィッグのお手入れ方法
【洗い方の基本】
• ゴシゴシ洗いNG/シャワー直接NG
• 洗面器にぬるま湯をため、専用シャンプーを使って優しく押し洗い
• 濯ぎもため濯ぎで丁寧に シャワーを直接かけて濯ぐのは、絡みの原因にもなるのでNGです。
• タオルで包み、軽く押さえるように水分を取る(絞ったりこすったりしない)
【乾かし方と整え方】
• 専用スタンドに乗せて自然乾燥
• ブラッシングは専用ブラシを使う(地毛用のブラシはネット部分を傷つける恐れあり)
※スタンドは、帽子用スタンドでも代用できます。ウィッグ購入時にサービスでついてくることもあります。
◎ 大切なのは「無理をしない」こと
「見た目のためにウィッグをつけなきゃ…」と無理をする必要はありません。
一番大切なのは、治療中の体と心を守ることです。
ウィッグの使用は、あくまで体調と肌の状態に合わせて調整し、つらいときには医療用帽子やスカーフなど、他の選択肢を取り入れることをおすすめします。
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